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【吟遊詩人】♪メリポの果てにみた夢♪【第七十楽章】

788 名前: 496 投稿日:2005/03/26(土) 23:44 ID:OwL1Q6tc
ジュノに戻ってからは今までが嘘のような毎日だった。
モンスターは歌に無頓着になり
喉を潤してもエレは何食わぬ顔。
俺は・・・声の出る限り、弦を弾く指が擦り切れる位に歌った。
プレリュードから始まり、勇ましくメヌエットを歌う。
煌びやかにマドリガルを奏で、リズミカルにマーチを弾く。
荘厳にレクイエムを悼み、そして戦闘のフィナーレ。
俺に休む時間は無い、いや 休む時間すら惜しいというのが正しいかもしれない。
傷ついたメンバーにピーアンを披露する。
そしてあの時、パーティの心得と同時に得たもの 『魔道士のバラード』

そう、パーティを組んだ瞬間から俺の舞台は始まっている。
その聴衆の多寡は問題ではない。
今、この瞬間を力一杯歌うこと、それ以上でも以下でもない。



そんなある日、ふと街を見渡すと同業者が多いことに気づいた。
いや同業者だから気づいたというべきだろうか。
皆巧みに変装してそれとわからないようにしている。
俺も今となってはそれなりに名前が売れ出して
ストーカー紛いに遭遇したこともある。だからだろう、わからない話ではない。
しかしアイドルグループじゃあるまいし人気だけでやっていけるのか?
 「舞台演出はギルがかかってるかもしれないが・・・」
若いポッと出が次々と脚光を浴びていくのを嫉妬していたのかもしれない。

かつてみた華々しさや晩餐会は一握りの詩人しか立てない舞台だったのだ。
田舎者ががんばった処でどうにもならない・・・そうも思えてきた。
今は大御所と呼ばれて有名無実の生活を送っている。
かつてのように舞台に立つこともめっきり少なくなった。

 「耳を傾けてくれる心があるのはありがたい・・・。」
演目は『乙女のヴィルレー』、観客はClipper。
染入るように聴いているClipper。
野外ライブも立派な舞台だ。
しかし そこで気が付いてしまった。
俺も含めてみんな誰かの歌の真似なんじゃないかと。
オリジナルは一曲もないんじゃないかと。
Clipperはそんな俺をじっと見つめている。

 「詩・・・書いてみようかな・・・。田舎者らしくブルースなんかを・・・さ。」
そう思ったら急に故郷が懐かしくなってきた。
 「帰ってみるかな、故郷ってとこに。 親父とお袋、元気かな・・・?」
かばんの中には黄色く変色した呪符デジョンが入っていた。

−おわり−